「沙睿梓驪/浅田次郎」

「沙睿阿砲茲Δ海宗今宵もみなさまがご自分の名誉のため、また、ひとつしかないお命のために、あるいは世界の平和と秩序のためにけっして口になさることのできなかった貴重な経験を、心ゆくまでお話し下さいまし。いつもどおり、前もってお断りしておきます・・お話になられる方は、誇張や飾りを申されますな。お聞きになった方は、夢にも他言なさいますな。あるべきようを語り、巌(いわお)のように胸に蔵う(しまう)ことが、この会合の掟(おきて)なのです」

僕はずっと視力が2.0〜1.5でした。

しかし最近歳のせいか体のそここに異変が起きています。

まず大好きな酒が弱くなった。

飲み会では大正漢方胃腸薬が欠かせない。
それでも二日酔いになる。

そして何より老眼?が進み、本や新聞の文字がまるで見えなくなってしまった。

サウナ仲間に進められ、100円ショップで老眼鏡を買ってきたのです。

しかしメガネなんて縁のなかった自分。

手の油でくもるし、欠伸でもしようならすぐに文字が見えなくなる。

メガネをしている人はこんな苦労をしているのだと、この歳になって初めて実感しました。

老眼鏡がおっくうなので最近は本を読まなくなってしまった。

そんな僕が、facebookつながりの人から感化され、久しぶりに図書館で本を予約して、老眼鏡にイライラしながら読んだ本。

それが浅田次郎「沙睿梓驪」でした。

16


僕は昔から浅田次郎が好きでした。

「地下鉄(メトロ)に乗って/浅田次郎」は初期の傑作でした。


地下鉄に乗って (講談社文庫)
地下鉄に乗って (講談社文庫)
クチコミを見る


しかし浅田次郎が売れて、長編になる頃から少し遠ざかっていました。

そして久しぶりの浅田次郎。

先程も話しました様に、facebookの友人が旅先で起こった本当の心霊現象のくだりを読んでからでした。

人には必ず誰にも言えない経験した話がひとつふたつは必ずあるものです。

それは心霊現象や超常現象に限らず、もしかしたら万引きやパンティ泥棒、あるいは殺したい人が一人いる・・等々・・。

とてもそんな話はできません。

しかし六本木辺りのビル最上階の豪勢で厳粛なサロンで聞く不思議な会。

それが「沙睿梓驪/浅田次郎」なのです。
沙高樓綺譚 (徳間文庫)沙高樓綺譚 (徳間文庫)
著者:浅田 次郎
徳間書店(2005-11)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

さて前置きが長くなってしまいました。

人の人生、不思議なもので順風満帆の時よりも波乱万丈のほうが興味がわきます。

映画やドラマ、小説は確かに面白いです。

しかし事実は小説よりも奇なりとよく言われます。

あなたが、そして僕が本当に体験した物語。
心の隅にしまっておいた過去。

人に話す事に罪悪感がある。

そんな話をできる場所がある。

「沙睿亜廚任后
読みはさこうろう・・です。
砂でできた大厦高楼(たいかこうろう)。高いところはもろくて危い・・という意味でしょうか・・。

僕がいつも思っているイベントは砂上の楼閣。

波打ち際で砂のお城を作りますが。しかし時がたてば波がそれらを流していきます。
二度と同じイベントは無い。

まさに人生そのものです。

人生を半分以上生きるとすでに人生の締めくくり方も考える。

しかし心に残った誰にも話していない事がまだあるのです。

もちろん僕にもあります。
墓まで持っていく話は一つ二つはあります。
でも他人から見れば大したことではないかも知れません。

「沙睿梓驪/浅田次郎」の最後の話は
『雨の夜の刺客』と言うとあるやくざの親分の語りです。

やくざのしきたりのため、人を殺すと言うおなじみの話ですが、この話は違う。

ひとつの事に命をかけている親分の話と、いやな事は蓋をして批判ばかりして自分に嘘をついて生きている人々。どちらが人間らしいか・・と言う事を問いかけてきます。

もちろん「沙睿梓驪」は小説ですが、一人ひとりの語り部がまるで実在しているかの様に描く浅田次郎。

久しぶりに魂を揺さぶられる本でした。

最後に100円ショップで買った老眼鏡では無く、ちゃんとした老眼鏡を買いたいと思います。



トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 

Copyright 2004-2007 Free Flight Inc., All rights reserved.