転失気(てんしき)

さて、そんな一人旅に欠かせないものがあります。

一人寂しく寝る時に聞くのが・・落語でげす・・。
とくに、あちきは円生が大好きで・・、ipodに落語を入れて旅に出るわけで・・。

異国の地で聞く落語は、格段の思いと・・、また見知らぬ人との間で、自分が日本人だと確認する大切な旅のアイティムなのです。

そしていつも、さげ(落ち)まで聞かずに寝てしまうのです。
だから、ひとつの落語を半月も聞いているということになってしまいます。

人は誰しも、負けず嫌い・・プライドがあります。
ついつい見栄を張ったり、知ったかぶりをしたりと・・・。
これは誰しも同じことです・・・。

ある在所の住職。

知ったかぶりで負けず嫌いだから、知らないことを認めたがらない。

ある日、下腹が張って医者を呼んだ時「てんしきはありますか?」と聞かれ、わからないとは言えないのでしかたなく「ありません」と答えてしまった。
医者は、「ではお大事に・・」・と。

悔しいので小僧の善長(ぜんちょ)に
「花屋に行って爺さんに、てんしきを借りてこい」
と、言いつける。

花屋も何だかわからないが、これも同じように負けず嫌いなので
「惜しいことをした。この間二つ三つあったが、お付け(味噌汁)に入れて食べてしまった」と、ごまかす。

小僧の善長はそのことを住職に話す。

「花屋に無い・・、これ善長、これから医者に薬を貰いに行くときにてんしきは何かと尋ねてまいれ。わしはその意味を知っているが、何でもすぐに教えたら、お前の修行にならぬ。
しかし、わしから聞いたと言ったではなく、あくまで善長、お前が知りたいと言うように・・」

とかくこの世は、こんな人が多い。
もしかしたら、僕も住職様に知ったかぶりの、プライドばかり高い厄介な人間だ。

小僧の善長「お住寺は、いつもこうやって用件ばかり言って・・これも修行のうちだけど・・

すみません・・、薬を貰いにきました・・。
それと・・、先生がおっしゃていた・・て・ん・し・き・・とはいったい何ですか・・」

医者「『てんしき』というのは傷寒論の中にある。転び失う気と書いて転失気だ。オナラのことだよ」

「オナラってのは何です? どういう形で?」

「形はない。屁のことだ」

「屁ってえと、あのプープー、へえ、あれのことですか」

「お住寺は、博学であるから、おならは出ますかと聞くより転失気は出ますかと聞いた。屁が出て体に悪いことは無い・・」

小僧の善長「なんだお住寺も、転失気の事を何も知らないじゃないか・・。
花屋なんてお付け(味噌汁)に入れて食べてしまった・・
大人なんて・・なんていい加減なんだ・・。悔しいからお住寺をだましてしまおう・・」

「どうした、聞いてきたか?」
「へえ、てんしきとは盃のことだそうで」
「盃? うーん、そうだとも。忘れるなよ。
テンは呑む、シュは酒で、キは器。これで呑酒器という」

小僧もこれには笑えましたが・・数日の後、医者が訪れた時、住職は
「先日、てんしきはありますか・・とお尋ねになりましたが・・、恥ずかしながら、少々持ち合わせもあります」

医者「いや、あれば体のためにいい事で」

住職「今日は、先生に自慢のてんしきをお見せしようと思いまして・・」
医者「いやいや・・、別に拝見する事ではありませんが」
住職「ぜひ、わし自慢の大きいてんしきを・・」

医者「え〜大きい転失気!!」

おなじみの・・おならの一席でございます。

見栄をはるのも・・ほどほどでございます・・。


2007年05月16日Comments(0)TrackBack(0)Smile&Cry | 落語

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